総合部門の評価
総合部門では「全ての評価項目について良い回路 = 汎用性の高い回路」を評価します.
「全ての評価項目について良い回路」とは,全ての評価項目の値が著しく悪い値とならず,
できるだけ多くの評価項目で他の回路より良い特性を示す回路のことです.「著しく悪い」
かどうかの判断は,具体的な応用先が決まっていないため相対的な評価によることとし,
統計的に扱います.
計算方法:
1. 各項目ごとに,全回路の平均値,標準偏差を求める.
2. 各回路の各項目について,偏差=(特性値−平均値)を標準偏差で割り規格化する.
3. 総合点 = Σ全項目 sgn(規格化偏差)×(規格化偏差の2乗)
で評価する.ここで,sgn(x) = 1 (x > 0), -1 (x < 0) である.
総合点の意味:
規格化した偏差は,必ず平均が 0,分散が 1 となり,相対的な評価が可
能であるばかりでなく,評価項目間でバラツキが異なるという問題を吸収
でき,扱いやすくなります.
ここで,もし十分な数の回路があれば,正規分布に従うと考えられますの
で,確率密度関数は exp(Σ(規格化偏差の2乗)) に比例し,各回路の特
殊性は Σ(規格化偏差の2乗) で評価できることになります.よって,全
ての項目でひどく悪い値とならいことの判断として,
偏差≧0 (平均以上) for ∀項目
をチェックし,これを満足する回路に対して,他の回路より良いことの指
標として(Σ偏差の2乗)を用いることが妥当と考えられます.
しかしこのままですと,全項目で平均以上となる回路がなかった場合が問
題になります.また,全項目が平均より極僅かにいいだけの回路と,ほと
んどの項目で規格化偏差=1 で一つの項目だけ規格化偏差= -0.1 となる
回路の比較では,前者が選ばれてしまい,多少納得いきません.そこで,
偏差<0 となる回路も評価の対象とできるように偏差の符合を反映して,
3. の評価式へと拡張しています.
備考:
I) 電圧,電流は対数をとってから 1. 以降の処理をします.実際,これらの値を小さくすることは難しいので,値がちょっとでも小さければ,確率密度関数が急激に減少する評価はおかしくないと考えられます.
II) 電力 Pdd は電圧 Vdd ならびに電流 Idd と log(Pdd) = log(Vdd) + log(Idd) なる関係を有します.したがって,log(Pdd) が log(Vdd),log(Idd) と相関を持ちますので,総合点の計算において電力の値は用いません.
III) 値が常に正で,通常,対数をとってプロットや評価される項目(出力抵抗,GB積,ノイズ,面積)についても対数をとって処理します.
IV) 応募要件の三点は満足され,評価が出来ない項目が現われた場合, 規格化偏差の値を -3 とします.
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